録画していた"文豪・谷崎潤一郎"の「陰翳礼讃」のTV特集を視た。
100年近く前の随筆だが世界で評価され多くの言語で翻訳されている。
和室、縁側、障子、すだれ、よしづ、ふすま、畳、欄間、床の間、掛け軸、一輪挿し。
光と影が織りなす自然光のコントラスト。
今やLEDライト全盛時代だが
「ただ明るければ良いというものでもない」というのは共感できる。
文明の利器が発達したからと言って、
必ずしも現代人の心が豊かになってないことは方々で言われている。
光と影を住居に取り入れることについて、建築家の安藤忠雄が
「かつて日本の住まいには心が宿るような空間があった」とも言っていた。
取り分け自分は夕暮れにギリギリまで電気を灯さずにいるのが好きだ。
鹿児島では丘の上のマンション、しかも12Fに住んでいたこともあり
西にゆっくりと夕闇の赤や紫、蒼色のグラデーションを眺められるのは
至福だった。お陰であの部屋では心を宿すことができた。
現在は妻の実家の和室で寝起きしている。
窓外は庭の花木くらいで絶景とはいかないものの、
床の間の妻の写真や愛用していたヨガマット、
仏前には花や供え物があり、
それはそれで心を宿せる空間となっている。
煌々としたライトの下よりも
薄暮に仏壇の前で手を合わせたほうが
念が通じると思うのは自分だけだろうか。
四季や自然を感じられる部屋。
大切な誰かをたやすく想い出せる部屋。
そういう部屋には心が宿せる。